【完全版】サッカーのPKルール ― やり直し・GKの立ち位置・ABBA方式まで徹底解説
公開日: 2026年3月16日
サッカーの試合でもっとも緊張感のある場面のひとつが、PK(ペナルティーキック)です。試合中に与えられるPKはもちろん、カップ戦の勝敗を決するPK戦は、選手だけでなく観客の心も大きく揺さぶります。
しかし、PKのルールを正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。「GKはどこまで動いていいの?」「なぜ今のPKはやり直しになったの?」「PK戦のABBA方式って何?」 ― こうした疑問を持ったことはありませんか?
この記事では、サッカー競技規則(Laws of the Game)の第14条「ペナルティーキック」を中心に、PKに関するルールを徹底的に解説します。試合中のPKからPK戦(KFPM)まで、これを読めばPKのすべてがわかります。
この記事の内容
1. PKが与えられる条件
PK(ペナルティーキック)は、守備側チームの選手が自分のペナルティーエリア内で直接フリーキックに相当するファウルを犯したときに、攻撃側チームに与えられます。
直接フリーキックに相当するファウルとは、相手を蹴る・つまずかせる・押す・タックルする・打つなどの身体的な接触を伴うファウルや、ハンドリング(ハンド)のことです。これらがペナルティーエリア内で起きた場合、すべてPKとなります。
PKが与えられる条件
- 直接フリーキックに相当するファウルであること
- ファウルが守備側のペナルティーエリア内で起きたこと
- ボールがインプレー中であること
なお、間接フリーキックに相当する反則(例: GKが自陣ペナルティーエリア内で6秒以上ボールを保持するなど)がペナルティーエリア内で起きた場合は、PKではなく間接フリーキックが与えられます。
ポイント
ファウルの地点がペナルティーエリアのライン上の場合もPKとなります。ペナルティーエリアのラインはエリアの一部だからです。
2. PKの手順(キッカー・GK・他の選手の位置)
PKが宣告されたら、以下の手順でキックが行われます。競技規則では、キッカー・GK・その他の選手それぞれの位置と役割が細かく定められています。
キッカー(ボールを蹴る選手)
- キッカーは特定されなければならない(誰が蹴るか明確にする)
- ボールはペナルティーマーク上に置く
- ボールは前方にけられなければならない
- キッカーは、ボールが蹴られて動くまで再びボールに触れてはならない(ダブルタッチ禁止)
ゴールキーパー(GK)
- ボールが蹴られるまで、キッカーに面してゴールライン上に立つ
- 少なくとも片足の一部がゴールライン上(またはゴールラインの上方)に触れている必要がある
- ゴールポストやクロスバー、ゴールネットに触れていてはならない
キッカーとGK以外の選手
- ペナルティーエリアの外にいること
- ペナルティーマークの後方にいること
- ペナルティーアークの外にいること(ペナルティーマークから9.15m以上離れる)
ペナルティーアークとは?
ペナルティーアークは、ペナルティーマークを中心とした半径9.15mの半円弧で、ペナルティーエリアの外側に描かれています。PKの際にキッカーとGK以外の選手がペナルティーマークに近づきすぎないようにするためのものです。ペナルティーエリアの一部ではありません。
3. GKのライン上ルール
GKのポジショニングに関するルールは、近年大きく注目されるようになりました。特に2019/20シーズンの競技規則改正で、GKの立ち位置に関するルールが明確化されています。
現行ルールの要点
現在のルールでは、ボールが蹴られる瞬間に、GKは以下の条件を満たしている必要があります。
GKのライン上ルール
- 少なくとも片足の一部がゴールラインに触れている、またはゴールラインの上方にあること
- ゴールラインより前方に出てはならない
- ゴールライン上で左右に動くことは許される
以前のルールでは「両足をゴールライン上に置く」ことが求められていましたが、現行ルールでは「片足の一部」で足りるため、GKにとっては少し自由度が増しています。
VARとGKのライン違反
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されたことで、GKのライン違反はより厳密にチェックされるようになりました。VARはPKの際にGKがゴールラインから前に出ていないかを確認し、違反があった場合は主審に通知します。
ただし、VARが介入するのはGKの違反があり、かつボールがゴールに入らなかった場合(やり直しが必要な場合)です。GKが前に出ていたがゴールが決まった場合は、得点が認められるため介入しません。
4. PKがやり直しになるケース
PKに関して最も複雑で質問が多いのが、「やり直し」のルールです。PKがやり直しになるかどうかは、誰が違反したかと結果がどうなったかの組み合わせで決まります。
GK(守備側)の違反
GKがボールを蹴る前にゴールラインより前に出た場合の処置は次の通りです。
- ゴールが決まった場合 → 得点が認められる(やり直しにならない)
- ゴールが決まらなかった場合 → やり直し(GKに警告が与えられる場合もある)
キッカー(攻撃側)の違反
キッカーが不正なフェイントを行った場合の処置です。
- ゴールが決まった場合 → 得点は認められずやり直し(キッカーに警告)
- ゴールが決まらなかった場合 → やり直しにならない(キッカーに警告、守備側の間接FK)
キッカーの味方(攻撃側)の侵入
- ゴールが決まった場合 → 得点は認められずやり直し
- ゴールが決まらなかった場合 → やり直しにならない(守備側の間接FK)
守備側の選手(GK以外)の侵入
- ゴールが決まった場合 → 得点が認められる
- ゴールが決まらなかった場合 → やり直し
攻守双方の違反
- 攻撃側と守備側の双方が同時に違反した場合 → やり直し
やり直し判定の原則
基本的な考え方は「違反した側が不利益を受ける」というものです。攻撃側が違反してゴールが決まった場合はやり直し(攻撃側が不利益)、守備側が違反してゴールが決まらなかった場合もやり直し(守備側が不利益)となります。
| 違反者 | ゴールが決まった場合 | ゴールが決まらなかった場合 |
|---|---|---|
| GK(ライン違反) | 得点を認める | やり直し |
| キッカー(不正フェイント) | やり直し + 警告 | 間接FK + 警告 |
| 攻撃側の味方(侵入) | やり直し | 間接FK |
| 守備側の選手(侵入) | 得点を認める | やり直し |
| 攻守双方 | やり直し | |
5. PK戦(KFPM)のルール
PK戦は、正式にはKFPM(Kicks from the Penalty Mark)と呼ばれ、「ペナルティーマークからのキック」と訳されます。試合中に与えられるPK(ペナルティーキック)とは異なり、勝敗を決定するための手続きです。
PK戦は、大会規定で引き分けの場合に勝者を決める必要がある試合(カップ戦のノックアウトステージなど)で行われます。
PK戦と試合中のPKの違い
- PK戦ではキックが入ってもリバウンドのプレーはない(GKがセーブしたボールをキッカーが再度蹴ることはできない)
- PK戦でのゴールは「得点」としてカウントされない(試合のスコアには加算されない)
- PK戦中に退場した選手の補充はできない
PK戦の基本ルール
- 両チーム5人ずつ交互にキックを行う
- 5人が蹴り終わる前に勝敗が決まった場合、残りのキックは行わない
- 5人ずつ蹴っても同点の場合、サドンデス方式で1人ずつ蹴り、差がついた時点で終了
- キックは試合終了時にいたフィールド上の選手のみが参加できる
6. PK戦の順番と進め方
コイントスと先攻・後攻
PK戦の前に、審判員がコイントスを行います。コイントスに勝ったチームのキャプテンが、先に蹴るか後に蹴るかを選択します。
キックの順番
現在の競技規則では、A-B-A-B-A-B...の交互方式が採用されています。先攻チーム(A)が1本目を蹴り、次に後攻チーム(B)が蹴る、という流れを繰り返します。
ABBA方式とは?
ABBA方式は、先攻の有利さを軽減するために考案された方式です。従来のA-B-A-B方式では、統計的に先攻チームの勝率がやや高いとされていました。
ABBA方式では、A-B-B-A-A-B-B-A...の順番でキックを行います。テニスのタイブレークと同様の仕組みで、2本目以降は先に蹴るチームが交互に入れ替わります。
現状のABBA方式
ABBA方式はIFAB(国際サッカー評議会)により試験的に導入されましたが、選手や観客にとってわかりにくいなどの理由から、現行の競技規則では正式採用されていません。現在は従来のA-B-A-B方式が使用されています。
人数の調整
PK戦の開始時に両チームの選手数が異なる場合(退場者がいた場合など)、選手が多いチームは相手チームと同じ人数になるように選手を除外しなければなりません。除外する選手はキャプテンが審判員に通知します。ただし、GKは除外の対象になりません。
GKの交代
PK戦中にGKが負傷した場合、そのチームに交代枠が残っていれば交代が認められます。交代枠がない場合でも、試合中に通常の手続きに基づき退いた選手以外の登録選手であれば、GKと交代することができます。
7. PKに関するよくある誤解
PKに関しては、多くの誤解や勘違いが広まっています。ここでは代表的なものを取り上げ、正しいルールを確認しましょう。
誤解1:「GKは蹴る瞬間まで動いてはいけない」
正解
GKはゴールライン上であれば左右に動くことは許されています。禁止されているのは、ボールが蹴られる前にゴールラインより前方に出ることです。片足がゴールライン上に残っていれば、もう片方の足はゴールラインの後方にあっても構いません。
誤解2:「PKは必ずゴールに向かって蹴らなければならない」
正解
ルール上、ボールは「前方にけられなければならない」とされています。つまり、前方向への動きがあればよく、横方向に大きく逸れるキックでもルール違反ではありません。味方にパスすることも理論上は可能です(有名な例として、2005-06シーズンのアンリとピレスによるPKでのパス未遂があります)。
誤解3:「助走でフェイントを入れるのは反則」
正解
助走中のフェイント(走るスピードを変える、体をゆするなど)は認められています。禁止されているのは、キッキングモーション(足を振り上げてボールを蹴る動作)に入った後のフェイントです。蹴る動作を完了させずに途中で止めると「不正なフェイント」として警告の対象となり、ゴールが入っていた場合はやり直しとなります。
誤解4:「PK戦ではGKもキッカーになれない」
正解
GKもキッカーとしてPK戦に参加できます。PK戦では試合終了時にピッチ上にいた全選手がキッカーの対象となり、GKも例外ではありません。実際に、GKがキッカーとして成功させる場面は珍しくありません。
誤解5:「PKを蹴った後にこぼれ球を蹴ってもいい(PK戦の場合)」
正解
試合中のPKでは、GKが弾いたボールやポストに跳ね返ったボールをキッカーやほかの選手がプレーすることは可能です。しかし、PK戦ではリバウンドのプレーは認められていません。ボールがGKにセーブされた時点、ゴールポストやクロスバーに当たった時点でそのキックは終了です。
8. まとめ ― PKルールを正しく理解しよう
PKに関するルールのポイントを改めて整理します。
- PKは、守備側が自陣ペナルティーエリア内で直接フリーキックに相当するファウルを犯した場合に与えられる
- GKはボールが蹴られるまでゴールライン上に片足の一部を残す必要がある
- やり直しの判定は「誰が違反したか」と「結果」の組み合わせで決まる
- PK戦(KFPM)は試合中のPKとは異なり、リバウンドプレーは認められない
- PK戦は現行ルールではA-B-A-B方式で行われる(ABBA方式は正式採用されていない)
- 助走中のフェイントは許可されるが、キッキングモーション後のフェイントは反則
- GKはライン上で左右に動くことは認められている
PKは試合の結果を大きく左右する重要な場面です。ルールを正しく理解していれば、試合中の判定の意味がわかるようになり、サッカー観戦がより一層楽しくなるでしょう。
審判員の方にとっても、PKのルールは試合運営の中で最も正確さが求められる場面のひとつです。ぜひこの記事を参考に、PKルールの理解を深めてください。