【世界一わかりやすい】サッカーのシミュレーションとは?基準・処分・VARでの判定を解説
公開日: 2026年3月16日
サッカーの試合を観ていると、選手が大げさに倒れて「シミュレーション」と判定される場面を目にすることがあります。解説者が「これはシミュレーションですね」と指摘したり、SNSで「ダイビングだろ!」と議論になったりすることも多いのではないでしょうか。
シミュレーションとは、サッカー競技規則において「反スポーツ的行為」に分類される反則で、ファウルを受けたふりをして審判を欺こうとする行為を指します。正しく理解すれば、試合中の判定の意味がわかるようになり、サッカー観戦がさらに面白くなります。
この記事では、シミュレーションの定義・判定基準・ダイビングとの違い・処分・VARによる判定・PKが取り消されるケースまで、できるだけわかりやすく解説していきます。
この記事の内容
1. シミュレーションとは何か?
シミュレーションとは、サッカーにおいてファウルを受けたように見せかけて審判を欺こうとする行為のことです。英語では「Simulation」と表記されます。
サッカー競技規則(Laws of the Game)の第12条「ファウルと不正行為」において、シミュレーションは「反スポーツ的行為」の一つとして明確に定められています。
競技規則における定義
「審判を欺こうとする、例えば、負傷を装ったり、ファウルをされたふりをする(シミュレーション)」は反スポーツ的行為として警告の対象となります。
具体的には、以下のような行為がシミュレーションに該当します。
- 接触がないのに倒れる ― 相手選手との接触がまったくないにもかかわらず、ファウルを受けたかのように転倒する
- わずかな接触を大げさに演技する ― 軽い接触を過剰に反応して大きく倒れたり、痛がるふりをする
- 負傷を装う ― 実際にはケガをしていないのに、痛みを訴えてプレーを止めようとする
- 意図的に相手に接触しに行く ― 自分から相手にぶつかりに行き、ファウルを受けたように見せかける
シミュレーションはサッカーのフェアプレーの精神に反する行為であり、審判の判定を歪め、試合の公正性を損なうものとして厳しく取り扱われています。
2. シミュレーションの判定基準
審判員がシミュレーションかどうかを判定する際には、複数の要素を総合的に考慮します。以下が主な判断ポイントです。
接触の有無と程度
まず確認されるのは、相手選手との接触があったかどうかです。接触がまったくないにもかかわらず倒れた場合は、シミュレーションの可能性が高くなります。ただし、接触があった場合でも、その程度に対して倒れ方が不自然に大きければシミュレーションと判断されることがあります。
倒れ方の不自然さ
選手の倒れ方や体の動きが自然かどうかも重要な判断材料です。通常のファウルで倒れる場合と比べて、以下のような動きは不自然と判断されやすくなります。
- 接触した部位と異なる方向に倒れる
- 接触のタイミングと倒れるタイミングにずれがある
- 両手を大きく広げながら派手に倒れる
- 倒れた後すぐに審判の方を見てアピールする
倒れた後の行動
シミュレーションと判定されなかった場合にすぐに立ち上がってプレーを続ける一方、ファウルの判定を得ると途端に痛がり始めるなど、倒れた後の行動も審判は注視しています。
状況の文脈
ペナルティーエリア内での接触や、PKを獲得できる場面など、ファウルを受けることで大きなメリットがある状況では、選手がシミュレーションを行う動機が高まるため、審判はより慎重に判断します。
ポイント
「接触があった=ファウル」ではありません。接触があってもそれがファウルに値しない程度であれば、倒れた行為がシミュレーションと判定されることがあります。
3. ダイビングとシミュレーションの違い
サッカーでは「ダイビング」と「シミュレーション」という2つの言葉がよく使われますが、この2つには違いがあります。
| シミュレーション | ダイビング | |
|---|---|---|
| 定義 | 競技規則上の正式な用語。審判を欺こうとする行為全般 | 一般的・口語的な表現。主に接触なしで倒れる行為 |
| 範囲 | ダイビング、大げさに倒れる行為、痛がるふり、負傷の偽装など幅広い | 主に「接触なしで倒れる」行為に限定 |
| 使用場面 | 競技規則、公式文書、審判レポート | テレビ解説、SNS、日常会話 |
| 処分 | イエローカード(警告) | シミュレーションとして同じ処分 |
つまり、ダイビングはシミュレーションの一種です。競技規則ではすべて「シミュレーション」という用語で統一されており、ダイビングという言葉は使われていません。テレビ中継やSNSでは「ダイブした」「ダイビングだ」と表現されることが多いですが、正式にはすべてシミュレーションとして扱われます。
4. シミュレーションの処分(イエローカード)
シミュレーションは反スポーツ的行為に該当するため、以下の処分が科されます。
シミュレーションの処分
シミュレーションと判定 → イエローカード(警告) + 相手チームの間接フリーキック
シミュレーションによって得られたフリーキックやPKの判定は取り消しとなり、シミュレーションが起きた場所から相手チームの間接フリーキックで再開されます。
シミュレーションの再開方法
シミュレーションが行われた場合の再開方法は次の通りです。
- フィールド内でシミュレーションが行われた場合 → その場所から相手チームの間接フリーキック
- ペナルティーエリア内でシミュレーションが行われた場合 → ペナルティーエリア内から相手チーム(守備側)の間接フリーキック
なお、試合中にシミュレーションで2枚目のイエローカードを受けた場合は、2枚目の警告による退場となります。シミュレーションを繰り返すことは非常にリスクの高い行為です。
5. VARによるシミュレーション判定
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入により、シミュレーションの判定は大きく変わりました。ピッチ上の主審が見逃したシミュレーションを、映像で確認して是正できるようになったのです。
VARが介入できるケース
VARは「はっきりとした明白な間違い」がある場合にのみ介入できます。シミュレーションに関連してVARが介入する典型的なケースは以下の通りです。
VARが介入するシミュレーション関連のケース
- シミュレーションでPKが与えられた場合 → PKは「はっきりとした明白な間違い」の対象となるため、VARが介入可能
- シミュレーションで退場に関わる判定が出た場合 → 退場処分もVARの対象
VARが介入しにくいケース
一方で、以下のような場合にはVARの介入が難しくなります。
- ペナルティーエリア外でのシミュレーション(フリーキックの判定はVARの対象外)
- 接触があったかどうかが映像でも判断しにくい微妙なケース
- 主審の判定が「はっきりとした明白な間違い」とまでは言えない場合
VARの導入により、特にペナルティーエリア内でのシミュレーションは発見されやすくなりました。実際に、VAR導入後はPK獲得を目的としたシミュレーションが減少したと言われています。
6. PKが取り消されるケース
シミュレーションとVARの関係で最も注目されるのが、PKの取り消しです。主審がファウルと判断してPKを与えた後、VARが映像を確認してシミュレーションと判定した場合、以下のように判定が変更されます。
PKが取り消される流れ
- 主審がPA内でのファウルと判断し、PKを宣告
- VARが映像を確認し、接触がないまたはシミュレーションと判断
- 主審がオンフィールドレビュー(OFR)で映像を確認
- PKの判定を取り消し、守備側チームの間接フリーキックに変更
- シミュレーションを行った選手にイエローカードを提示
このように、VARの導入以前であれば成功していたかもしれないシミュレーションが、映像確認によって覆されるケースが増えています。選手にとっては、シミュレーションのリスクがこれまで以上に高くなったと言えるでしょう。
PKが取り消されない場合
注意すべきは、接触があり、それがファウルに相当すると判断される場合はPKは取り消されないということです。たとえ倒れ方が多少大げさであっても、ファウル自体が成立していればPKの判定は維持されます。この場合、シミュレーション(大げさに倒れた行為)に対するイエローカードが追加で提示されることもあります。
7. 具体的なシーンで理解するシミュレーション
シミュレーションの理解を深めるために、いくつかの典型的なシーンを見てみましょう。
シーン1: PA内で接触なしに倒れる(シミュレーション)
攻撃側の選手がペナルティーエリア内でドリブル中、相手DFが近づいたが接触はなかった。しかし、攻撃側の選手は接触があったかのように倒れてPKをアピールした。
判定: シミュレーション → イエローカード + 守備側の間接FK
接触がないにもかかわらず倒れた行為は、明確なシミュレーション。PKは与えられず、シミュレーションを行った選手に警告。
シーン2: わずかな接触を大げさに倒れる(シミュレーション)
攻撃側の選手がペナルティーエリア内で相手DFとわずかに腕が触れた程度の接触があった。しかし、攻撃側の選手は大きく跳ね飛ばされたかのように派手に転倒し、PKを要求。
判定: シミュレーション → イエローカード + 守備側の間接FK
接触はあったがファウルに値する程度ではなく、倒れ方が接触の程度に対して不自然に大きいため、シミュレーションと判定。
シーン3: VARでPKが取り消される(VAR介入)
攻撃側の選手がペナルティーエリア内で倒れ、主審がPKを宣告。しかしVARが映像を確認したところ、接触がなくシミュレーションであることが判明。主審がOFRで映像を確認し、判定を変更。
判定: PK取り消し → イエローカード + 守備側の間接FK
VARの介入により、主審の最初の判定が覆された典型的なケース。シミュレーションを行った選手に警告が提示される。
シーン4: ファウルは成立するが大げさに倒れた(ファウル+シミュレーション)
攻撃側の選手がペナルティーエリア内で相手DFに足を引っかけられたが、実際の接触以上に大げさに倒れて痛がるふりをした。
判定: PK + シミュレーションのイエローカード
ファウル自体は成立しているためPKは維持される。ただし、大げさに倒れた行為はシミュレーション(審判を欺こうとする行為)として警告の対象となる場合がある。
8. シミュレーションに関するよくある誤解
シミュレーションについては、多くの誤解が広まっています。ここでは代表的な誤解を正していきましょう。
誤解1:「倒れたらすべてシミュレーション」
選手が倒れたこと自体がシミュレーションになるわけではありません。ファウルを受けて正当に倒れることは何ら問題ありません。シミュレーションとは、あくまで「審判を欺こうとする意図」を持って倒れたり演技したりする行為です。
誤解2:「接触があればファウル、なければシミュレーション」
これは最もよくある誤解の一つです。接触があってもファウルにならないケースはたくさんあります(正当なチャージ、軽微な接触など)。逆に、接触がなくても選手が自らバランスを崩して倒れることもあり、その場合は「ノーファウル」であってもシミュレーションとは限りません。審判は接触の有無だけでなく、選手の意図を総合的に判断しています。
誤解3:「シミュレーションはレッドカード」
シミュレーション単体での処分はイエローカード(警告)です。レッドカードが出るのは、同一試合中に2回目のイエローカードとしてシミュレーションの警告を受けた場合(2枚目の警告による退場)のみです。
誤解4:「VARがあれば必ずシミュレーションは見つかる」
VARは万能ではありません。VARが介入できるのはPKの判定や退場に関わるケースなど、限定された場面のみです。ペナルティーエリア外でのシミュレーションや、フリーキックの判定に関しては、基本的にVARは介入しません。
誤解5:「自分から倒れたら必ずシミュレーション」
選手が意図的に倒れる場合でも、それが「審判を欺こうとする行為」でなければシミュレーションにはなりません。たとえば、ファウルを受けた瞬間に自らの安全を守るために倒れることや、ファウルを受けたことを主審にわかりやすく示すために倒れることは、必ずしもシミュレーションとは判断されません。
ポイント
シミュレーションの判定で最も重要なのは、「審判を欺こうとする意図があったかどうか」です。接触の有無や倒れ方だけで機械的に判断されるものではありません。
9. まとめ ― シミュレーションを正しく理解しよう
シミュレーションについて、改めてポイントを整理します。
- シミュレーションとは、ファウルを受けたふりをして審判を欺こうとする行為で、「反スポーツ的行為」に分類される
- 判定には接触の有無と程度・倒れ方の不自然さ・状況の文脈などが総合的に考慮される
- ダイビングはシミュレーションの一種であり、競技規則の正式用語はシミュレーション
- シミュレーションの処分はイエローカード(警告)+相手チームの間接フリーキック
- VARの導入により、特にPKに関わるシミュレーションは発見されやすくなった
- VARがシミュレーションと判定した場合、PKは取り消され、守備側の間接FKに変更される
- 接触があっても倒れ方が大げさであればシミュレーションと判定されることがある
- シミュレーションの判定で最も重要なのは「審判を欺こうとする意図」の有無
シミュレーションは、サッカーのフェアプレーの精神を守るうえで見逃すことのできない反則です。判定基準を理解しておくことで、「なぜイエローカードが出たのか」「なぜPKが取り消されたのか」がわかるようになり、サッカー観戦がより深く楽しめるようになるでしょう。
サッカー観戦や審判活動の際に、ぜひこの記事を参考にしてみてください。