【世界一わかりやすい】VARとは?介入基準・仕組み・OFRをわかりやすく解説
公開日: 2026年3月16日
サッカーの試合中継を観ていると、「VAR(ブイエーアール)」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。「VARが介入しました」「OFRを行います」――こうした解説が流れるたび、画面の前で「VARって結局何をしているの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
VARとは、「Video Assistant Referee(ビデオアシスタントレフェリー)」の略で、映像を使って主審の判定をサポートする審判員のことです。2018年のFIFAワールドカップで本格導入されて以来、世界中のリーグで運用が広がり、今やサッカーに欠かせない制度となっています。
この記事では、VARの仕組み・4つの介入場面・OFR(オンフィールドレビュー)の流れ・介入しないケース・よくある誤解まで、できるだけわかりやすく解説していきます。
この記事の内容
1. VARとは何か?
VARは「Video Assistant Referee」の頭文字を取った略語で、日本語では「ビデオアシスタントレフェリー」と訳されます。試合中にピッチ上にいる主審とは別に、ビデオオペレーションルーム(VOR)と呼ばれる部屋から映像を確認し、主審をサポートする審判員のことです。
VARは主審に代わって判定を下す存在ではありません。あくまで「アシスタント」であり、最終的な判定は常に主審が行います。VARの役割は、主審が「はっきりとした、明白な間違い(clear and obvious error)」を犯した場合や、「見逃された重大な事象(serious missed incident)」があった場合に、主審に情報を提供することです。
VARの基本構成
- VAR ― ビデオアシスタントレフェリー(映像を確認する主担当)
- AVAR ― アシスタントVAR(VARを補助する審判員)
- VOR ― ビデオオペレーションルーム(映像確認を行う部屋)
- RRA ― レフェリーレビューエリア(ピッチサイドのモニター設置場所)
VARチームは試合中、すべてのプレーを映像で確認しています。しかし、VARが主審に連絡を取るのは、限定された場面に限られます。これが「4つの介入場面」です。
2. VARの4つの介入場面
VARが介入できるのは、競技規則で定められた4つの場面に限定されています。これ以外の場面では、たとえ主審の判定が間違っていたとしても、VARは介入しません。
VARが介入できる4つの場面
- 得点かどうか ― ゴールが認められるべきか、取り消されるべきか
- ペナルティーキック(PK)かどうか ― PKが与えられるべきか、取り消されるべきか
- 退場(レッドカード)かどうか ― 退場処分が正しいかどうか(2枚目の警告は含まない)
- 人違い ― 主審が警告・退場の対象選手を間違えた場合
それぞれの介入場面を詳しく見ていきましょう。
介入場面1: 得点かどうか
ゴールが決まった場面で、その得点に至るまでのプレーに反則がなかったかを確認します。たとえば、得点の直前にオフサイドがあった、ハンドがあった、ファウルがあった、といった場合にVARが介入し、主審に伝えます。逆に、ゴールが認められなかった場面で、実際にはゴールであるべきだった場合にも介入します。
介入場面2: ペナルティーキックかどうか
ペナルティーエリア内でのファウルやハンドについて、PKが与えられるべきか、あるいは与えられたPKが取り消されるべきかを確認します。PKは試合の結果に直結する重大な判定であるため、VARの介入対象となっています。
介入場面3: 退場かどうか
退場に相当する行為(乱暴な行為、著しく不正なファウルプレー、DOGSOなど)があったかどうかを確認します。ただし、2枚目のイエローカードによる退場(警告の累積)は介入対象外です。また、イエローカードの判定そのものにもVARは介入しません。
介入場面4: 人違い
主審がカードを提示する際に、対象の選手を間違えた場合に介入します。たとえば、ファウルを犯した選手Aではなく、近くにいた選手Bにイエローカードを出してしまった場合、VARが訂正を促します。
重要ポイント
VARが介入するのは、上記4場面で「はっきりとした、明白な間違い」があった場合のみです。判定が「微妙」な場合や「どちらとも取れる」場合には、主審の判定がそのまま尊重されます。
3. OFR(オンフィールドレビュー)とは
OFRは「On-Field Review(オンフィールドレビュー)」の略で、主審がピッチサイドに設置されたモニター(RRA:レフェリーレビューエリア)で自ら映像を確認するプロセスのことです。
VARから連絡を受けた主審は、次の2つの方法で判定を見直すことができます。
VARによるレビューの2つの方法
- OFR(オンフィールドレビュー) ― 主審がピッチサイドのモニターで映像を確認して判定
- VARオンリーレビュー ― VARからの情報のみで主審が判定を変更(モニター確認なし)
OFRが推奨される場面
OFRは、主観的な判定が関わる場面で推奨されます。たとえば、ファウルかどうか、ハンドかどうか、DOGSOかSPAか、といった判定は審判の主観的な判断が必要です。このような場合、主審自身が映像を確認して最終判断を下すことが求められます。
VARオンリーレビューで済む場面
一方、客観的な事実に基づく判定では、OFRを行わずにVARからの情報だけで判定が変更されることがあります。代表的な例がオフサイドです。オフサイドは「オフサイドポジションにいたかどうか」という事実の問題であり、映像とラインで客観的に確認できるため、VARオンリーレビューで判定が変更されます。
OFRの流れ
- VARが映像を確認し、「はっきりとした、明白な間違い」の可能性があると判断
- VARが主審にレビューを推奨(主審はテレビ画面のジェスチャーで合図)
- 主審がRRA(ピッチサイドのモニター)に移動
- 主審が映像を確認し、最終判定を下す
- 主審がテレビ画面のジェスチャーで判定を示し、プレー再開
主審がモニターに向かう際に見せる「四角形を描くジェスチャー」は、OFRを行うことを示すサインです。テレビ中継でもおなじみの光景になりました。
4. VARが介入しないケース
VARの介入対象は4つの場面に限定されているため、それ以外のプレーについてはVARは介入しません。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- イエローカード(警告)の判定 ― イエローカードが正しかったかどうかにはVARは介入しない
- 2枚目のイエローカードによる退場 ― 直接のレッドカードのみが介入対象
- コーナーキック・スローイン・ゴールキックの判定 ― これらの判定は介入対象外
- フリーキックの判定(PA外のファウル) ― PKに関わらないファウルの判定は対象外(ただし、退場に相当する場合は介入対象)
- オフサイドの見逃し(得点に直接関わらない場合) ― 得点に至らないオフサイドは介入対象外
よくある疑問
「なぜVARは今のファウルに介入しないの?」というSNSでの不満は多いですが、VARは「すべての判定を正す装置」ではありません。介入できる場面が厳密に限定されていることを理解しておきましょう。
5. 「最小限の干渉・最大の利益」の原則
VARの運用を理解する上で最も重要な原則が、「最小限の干渉で、最大の利益を得る(minimum interference, maximum benefit)」です。
この原則は、VARが試合の流れを過度に止めたり、すべての判定に口を出したりすることを防ぐために設けられています。VARが介入するのは、あくまで「はっきりとした、明白な間違い」がある場合だけです。
「最小限の干渉・最大の利益」の意味
- VARの介入は試合を中断するため、必要最小限に留める
- 介入するのは試合結果に大きく影響する重大な判定ミスがあった場合のみ
- 「微妙な判定」や「どちらとも取れるプレー」では介入しない
- 介入する場合は、確実に正しい判定に導く(最大の利益)
つまり、VARは「完璧な判定」を目指すものではなく、「試合を決定づけるような重大な誤審」を防ぐための仕組みです。この原則を理解しておくと、「なぜVARが介入しなかったのか」が納得できるようになります。
6. VARの歴史と導入経緯
VARの導入は、サッカー界にとって歴史的な変革でした。その経緯を振り返ってみましょう。
導入の背景
サッカーは長い間、「人間の判定」を尊重するスポーツとして、テクノロジーの導入には慎重な姿勢を取ってきました。しかし、試合の勝敗を左右する誤審が繰り返されるたびに、ビデオ判定の導入を求める声が高まっていきました。
特に2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会で起きた、イングランド対ドイツ戦でのフランク・ランパードの「幻のゴール」は大きな転機となりました。明らかにゴールラインを越えたシュートがノーゴールと判定されたこの事件は、世界中でテクノロジー導入の議論を加速させました。
VARの導入タイムライン
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2012年 | ゴールラインテクノロジー(GLT)がIFABにより承認 |
| 2016年 | VARの試験運用が世界各地のリーグで開始 |
| 2018年3月 | IFABがVARを正式に競技規則に組み込むことを承認 |
| 2018年6月 | FIFAワールドカップ(ロシア大会)でVARが初めてワールドカップに導入 |
| 2020年 | Jリーグで正式にVARの運用を開始 |
導入当初は「試合の流れが止まる」「判定に時間がかかりすぎる」といった批判もありましたが、運用が進むにつれてプロトコルが改善され、現在では世界中の主要リーグで不可欠な存在となっています。
7. VARに関するよくある誤解
VARについては、多くの誤解が広まっています。ここでは代表的な誤解を取り上げ、正しい理解を促します。
誤解1: 「VARが判定を下す」
正しくは: VARは主審に情報を提供するだけです。最終的な判定を下すのは常にピッチ上の主審です。VARは「アシスタント」であり、判定権を持つのは主審です。
誤解2: 「VARはすべてのプレーをチェックして介入できる」
正しくは: VARが介入できるのは4つの場面(得点・PK・退場・人違い)に限定されています。イエローカードやスローインの判定には介入できません。
誤解3: 「VARがあれば誤審はなくなる」
正しくは: VARは「はっきりとした、明白な間違い」を修正するための仕組みです。主観的な判定においては、映像を見ても意見が分かれることがあり、すべての誤審を排除できるわけではありません。
誤解4: 「選手や監督がVARを要求できる」
正しくは: VARによるレビューを要求できるのは主審のみです。選手や監督がVARを要求する権利はありません。テニスの「チャレンジ制度」とは異なる仕組みです。選手がテレビ画面のジェスチャーをすることは、競技規則上、警告の対象となる場合があります。
誤解5: 「VARオンリーレビューでは主審は映像を見ていない」
正しくは: VARオンリーレビューでは、主審はモニターで映像を確認しませんが、VARが確認した事実情報を音声で受け取り、それに基づいて判定を変更しています。オフサイドなどの客観的事実については、主審がモニターを確認する必要がないため、この方法が取られます。
8. まとめ ― VARを正しく理解しよう
VARについて、改めてポイントを整理します。
- VARは「Video Assistant Referee」=「ビデオアシスタントレフェリー」で、映像を使って主審をサポートする審判員
- VARが介入できるのは4つの場面のみ(得点・PK・退場・人違い)
- 介入の条件は「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」があること
- OFR(オンフィールドレビュー)では、主審がピッチサイドのモニターで映像を確認して最終判定を下す
- 客観的な事実(オフサイドなど)はVARオンリーレビューで判定変更されることがある
- VARの基本原則は「最小限の干渉で、最大の利益を得る」
- VARは判定を下す存在ではなく、最終判定権は常に主審にある
VARは「すべての誤審をなくす魔法の装置」ではなく、「試合を決定づけるような重大な判定ミスを防ぐための仕組み」です。この本質を理解しておけば、試合中にVARが介入した場面や、逆に介入しなかった場面の理由がわかるようになり、サッカー観戦がより深く楽しめるようになるでしょう。
サッカー観戦や審判活動の際に、ぜひこの記事を参考にしてみてください。